東京藝術大学入試情報サイト > 江藤 佑一

重力と彫刻

彫刻科では主に石、木、金属、粘土などの素材と向き合い、その素材を扱うための技術と思考を深めます。

扱うに一筋縄ではいかない素材を作品にするために考えなければならない物理的な制約と素材の持つ特性に対して、理解をして能動的な工夫を試みるという姿勢が身に付くのも、彫刻科の特徴だと思います。


私が藝大の彫刻科を志したのは、高校を卒業してからのことです。昔から工作や美術の時間が好きでしたが、特別深い繋がりや明確な理由があったわけではありません。

受験を経験しないまま高校を卒業して3年かかって合格し、4年間学んできて今がありますが、いつも悩みながらの私を支えてくれ、好きなことを続けることを許してくれた両親に本当に感謝しています。

学びたいこと、知らないことはまだまだありますが、モノの内側に対して重心や軸を捉え想像し、建設的にかつ柔軟な発想で選択を積み重ねるという過程にこそ大事な支えになる何かがあるのではないか、ということが彫刻から学んだことの一つです。


多くの領域の境界が溶解し、情報に溢れモノの輪郭が不透明で不確かな今日、彫刻という領域も例外ではありませんが、1学年20人と少人数ながらひたむきな仲間達と多くの価値観と刺激を交錯させ、それぞれが自分の距離感で自分の大事にしていきたいものと向き合いながら燦然と輝く4年間を送れたことは確かなものとして実感を持っています。

私は彫刻作品以外にパフォーマンスや平面作品、ビデオ作品を制作してきました。

限定した枠の中だけでなく、色々な角度から彫刻や「作る」ということについて考えたいからです。

これから先どうなるかは分かりません。しかし私達の立っている場に同じく接地面を持ち、重力を受けながら屹立することのできる彫刻というメディアやモノが、将来、社会や文化においてどのような関係性を築いていけるか、いつか自信をもって言い切れる本質を、作品を通して獲得したいと思っています。

(2015.6)

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プロフィール

1989年東京都生まれ。2015年東京藝術大学院修士課程入学。
主な展覧会に2015年「TERATOTERA祭り2015 -Sprout-」(三鷹)、
2015年「TWS-Emerging 2015」Tokyo Wonder Site(渋谷)、
2014年「アート・コミュニケーション@3331」アーツ千代田3331(末広町)、
2014年「トーキョーワンダーウォール公募2014」東京都現代美術館(清澄白川)など。