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アートの懐に飛び込む

高校としてインドにあるインターナショナルスクールを卒業し、学部時代にもイギリスへ留学するなど、かねてより国際的なフィールドで活躍することを願っていました。

大学学部時代はイメージ哲学という分野を専攻し、また映像制作に没頭していたため、美術に特化したバックグラウンドを持っていたわけではありません。しかし、イギリスや日本でのギャラリー勤務経験などを経て、徐々に領域横断的なあらゆるものを受け入れる可能性を持つ現代アートのフィールドに惹かれるようになりました。現代アートの文脈の中で、理論と実践を行き来できる場所の可能性を模索していたところ、東京芸術大学に国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻(通称:GA)が設立されるということを聞き、まさに流れるようにして志望するに至りました。

入学後は、芸術批評理論や美術史の概論を学びつつ、展覧会を実際に観に行きキュレイトリアルの観点から展覧会を見つめ報告するということを経験しました。また「グローバル時代の芸術文化概論」というGAの必修科目にて、ブルーノ・ラトゥール教授ら世界的に著名なゲスト講師と英語で議論を交わしたことも大変刺激になりました。

また後期からは、実際に東京芸大大学美術館陳列館のスペースを使い、他の学生とともに、チーフキュレーターとして展覧会を実践的に企画しました。そこには理論的側面だけではなく、作家や画廊との交渉、広報、輸送業者とのやりとりといった展覧会を実現するための多くの内容が含まれています。この展覧会は短い期間ながら計3500名程度の方に来場していただき、大変実りあるものだったと感じています。

いま現在は大学院を休学し、指導教官の長谷川祐子教授のもと、第7回モスクワビエンナーレ「Clouds ⇄ Forests」のキュレイトリアルアシスタントを務めるなど、国内外の複数プロジェクトに携わらせていただいています。世界中のアーティストや現代アートシーンを自らの眼で見つめられるこの貴重な経験を、復学後の自分の研究や実践に活かしたいと考えています。険しい道のりではあるものの、丁寧にひとつひとつ学びながら将来的にも国内外の展覧会やビエンナーレのキュレーションに関わりたいと、そう思っています。

モスクワのガレージ美術館の展覧会オープニングにて、長谷川教授、モスクワビエンナーレのチームと(一番左が筆者