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工芸の多様性と将来への展望

私は陶芸家のルーシー・リーの展示を見たのがきっかけで工芸に興味を持ちました。色合いや形、テクスチャーという見た目の好みから入りましたが、自分の生み出した形が人に使われることによって誰かの生活に馴染む、という工芸品の鑑賞だけではない実用的な部分にも魅力を感じました。

芸大の工芸科はその中で陶芸、漆芸、染織、彫金、鍛金、鋳金、大学院ではガラス造形もあり、7通りの専攻があります。学部二年次にその一つを選び、そこから長い間その素材と向きあうことができます。感じ方は人によって違うかもしれませんが、芸大の工芸科は一課題にかける時間が長く、余った時間の当て方は人によって様々です。一点集中型でずっと課題の作品と向きあう人もいれば、多趣味で別の媒体で作品を作っている人もいるし、留学の準備をしている人もいれば、バイトやインターンに力を入れている人もいます。人それぞれのやりたいことに時間を設けられ専念することができるとも言えるし、逆に自分から何かを率先してやろうとしなければ得られるものも少なくなってしまうとも言えます。ただ、何かを始めようとして自分から働きかければ助けてくれる先輩や先生方や同級生、何よりも設備が十分に取り揃っているのがこの科の魅力の一つです。

工芸科は専攻が様々なぶん将来は色んな方向に可能性があります。作家になる人もいれば、就職する人も多種多様な企業やブランドに就職していきます。ただ共通して言えるのはみんな自分の好きな道を見つけ、そこに向かって主体的に動いていることです。

工芸科に限らず、この大学は学生数がとても少ないです。だからこそ教授や講師の先生方は生徒の人柄や性質までよく見た上で指導してくださるし、交友関係を増やそうと思えば、学生数の少なさゆえに知り合いと知り合いが繋がっていることも多々あり、学科、学年、もはや音楽学部、美術学部問わず色んな人達と関われる機会も多いです。この大学で出会う人達は遊ぶ時はとことん遊び、やる時はとことんやる人が多くいて私自身日々刺激を受けています。