東京藝術大学入試情報サイト > 眞船 峻

建築を学ぼうとするきっかけは十人十色です。しかし、そのきっかけや熱量を失うことなく学び続けるのは大変です。学べば学ぶほど、建築の扱う領域は茫洋としていて奥深いため、学生で学べることは一部分であり、時に自分の現在地を見失うことがあるからです。しかし、それは同時に多くの時間を費やしてでも学び続けたいと思わせてくれる原動力にもなります。冒頭から抽象的な話になってしまいましたが、そんな建築の虜となった人は数多くいて,私もその内の一人です。

現在、私が所属する構造計画の研究室では、弁天堂というお堂を設計しています。構造材の木材を積み上げていく建築なのですが、複雑な与条件をクリアにしていくのは頭を使います。スケッチや3D-CADを用い、寸法やデータをもとに模型を作ります、またCADや模型だけでは捉えきれない。重量や仕上げの素材感、つくり方(施工方法)を確かめるために、原寸スケールのモックアップをつくり、身体でつくることも実践しています。

建築科に限ったことではありませんが、藝大の特徴として「そうであるに違いない」という仮説を、作品をつくることで検証していく強さが挙げられます。時々、表現することに疑いと怖さを感じることもありますが、内側から湧いて出てくるものをアウトプットした時、思いもかけない驚きや出会いがあり、いつも新鮮な気持ちでいられます。

藝大の建築科は、学部生も大学院生も同じフロアで学ぶ環境があり、先輩・後輩の間で気兼ねなくアドバイスを頂いては、設計や表現の種を学ぶことができます。人数も他大学と比べると少ないため、一人ひとり作品をプレゼンしては、先生方にきちんと講評してもらえます。また、その少なさゆえに生徒同士、家族的なつながりがあるのも魅力的です。

最後になりますが、大学は、答えのない問いに向かう思考や方法を身につける場所であると私は考えています。自然や素材の振る舞いに対し五感を使って感じとり、時間や大きさなど様々なスケールや分野を横断していける想像力を駆使し、多くのことを学び、身につけられる環境が藝大にはあると感じています。