東京藝術大学入試情報サイト > 村上 愛佳

グローバルアートプラクティス専攻(通称:GAP)には海を越えてバックグラウンドも表現方法も異なる学生たちが集まります。だいぶ大げさに言うと、まるで小さな世界がそこでは広がり、そして問題がそこかしこで繰り広げられるのです。生まれてまもない専攻ということもあり、学生間を越えてうまくいかないことも多々あります。時にはそれが億劫に感じてしまうことも多々ありますが、そんな状態こそが正に現代の縮図にも見え、グローバル化した世界の状態そのもののようにも思えます。

私は学部の終わりの頃、漠然と自分が海外で展示をすることついて考えていました。そして海外で作品を発表するための足場を作る作業が出来ると思い、GAPへの進学を選びました。入学後はGAPのプログラムでフランスにて現地の学生とディスカッションを繰り広げ、逆に彼等を日本に招いて展示を行いました。それは展示を通して“コラボレーション”の真価について問われる貴重な経験となりました。その他にも学外で私の海外展示は思っていたより早く実現し、インドネシア・アチェ州を2回訪れプロジェクトを行いました。アチェ州はインドネシアの中でも特に敬虔なイスラム教徒が多く、表現の制限も日本とは違う中で何ができるのかを考え行動出来たのは、GAPでの修練が活きたからでした。私は2004年に発生したスマトラ島沖地震の爪痕が風景や人の心に顔を出す度に、故郷である東北を思い出しました。その時アチェ州はただの異国ではなく、私がよく知る場所のパラレルとなったのです。

そんなGAPは今年で3年目となり、教員陣やカリキュラムも大きく変わりました。新しい体制となり学生にとっては制作に打ち込みやすい環境が整ってきているように見えます。海外から社会問題に向き合う現代アーティストを招聘する「社会実践論」という授業も本格的に実施され、社会問題や政治的問題に強い興味を持つ学生たちにも良い刺激を与えてくれます。実験的な教育に踏み込み、主体的に大学内外で制作活動を漸進させていける人にとって実りある現場になると思います。