東京藝術大学入試情報サイト > 花岡 日菜子

私は4歳でお箏を始めました。幼少時は多くの習い事をしていましたが、学年が上がるに連れ、環境や学業を理由に一つずつやめていきました。
しかし、その中で、お箏のお稽古だけは、いつのまにか習い事から生活の一部となり、現在に至っています。大学進学時に藝大を意識したのは、飽きることなく続けてきた箏の魅力を改めて理解したいと強く思ったからです。

大学に入学して多くのことを学びました。何よりも“素晴らしい環境で学べた”ということが貴重な財産となりました。周りや時間を気にすることなく、練習にのめり込むことができる、そして、同世代の音楽を志す仲間たちと切磋琢磨し、演奏だけに集中できる。これほど音楽家にとって贅沢なことは無いと思われませんか?

邦楽科では、年に2回の総合実習、藝祭、定期演奏会があります。
9月の藝祭では箏曲山田流の自主演奏会と邦楽科大演奏会が開かれます。ほとんどの学生は夏休みには藝祭の演奏会にむけてほぼ毎日顔を合わせ、より良い演奏にするために意見を出し合い、曲の合わせをいたします。空き時間には、夏休みの子供にまぎれて上野公園を散歩したり、美術館に行ったり、有意義な時間を過ごしました。また、演奏会の舞台作りも自分たちで行うので、どのように演奏会が開かれるかということに加え、多くの方々のおかげで演奏ができることを裏方を通して学ぶことができました。藝祭の醍醐味としましては、普段はあまり交流のない美術学部の方々と触れ合うことで、目で見る感覚を覚えました。耳ばかり発達しがちですが、芸術は五感が大切だと思った瞬間です。

専攻実技の他に副科実技で、長唄三味線、長唄、宝生流の謡、そしてピアノ、声楽など洋楽の実技も履修させていただき、多方面から自分の実技の糧にすることもできたと思います。

個人としては、演奏技術だけではなく、先輩方から礼儀作法も学びました。多くの素晴らしい卒業生の先輩方と接する機会もあり、その折に大先輩方の所作や言葉遣いの美しさに心を揺さぶられ、私もこのような方々のようになりたいとの思いを強くいたしました。

将来はまだ漠然としておりますが、箏の魅力を国内外の多くの人々に伝えたいと思っております。現代では、瞬時に世界へ発信できます。地球の裏側まで今、この場所から伝えられるのです。今の時代にあった伝え方をとりいれて、古き良き日本の古典を世界中の多くの人々に伝えられる活動をしたいと思っております。