東京藝術大学入試情報サイト > 三井 千絵

私が最初に長唄と出会ったのは中学生の部活動でした。都内の中高一貫校で唯一長唄部がある学校だったのです。ひょんな事で入部したのでさして興味も無く、何度も辞めようとしていました。ところがやっとの事で一曲仕上がった時それまで感じたことのない様な達成感に包まれました。それからというもの長唄にどハマりし、中学3年のある日、現在の師匠から藝大への道を勧められ進学を決意しました。

念願叶い入学した藝大には沢山の授業やレッスンがありました。専攻の楽器はもちろんそれ以外もたくさん学ぶ事が出来るのはとても魅力的でした。しかも舞台で拝見して憧れていた一流の先生方が教えて下さる。こんな環境は藝大ならではだと思います。それまで邦楽のジャンルでは長唄と長唄三味線しか習ったことがありませんでした。初めてのお囃子のレッスンで小鼓を持った時、そして音が鳴った瞬間の気持ち良さは今でもハッキリと覚えています。また同じ三味線音楽のジャンルである常磐津や清元も学んだ事で長唄を学ぶ上での理解がより深まりました。

面白い授業は他にもあり、三味線作曲法というものがあります。三味線を用いて自らが作曲し演奏するという内容です。年に1回作曲発表会があり、そこで優秀であった作品は台東区主催のフレッシュコンサートにて演奏機会を与えられます。実際学部3年の時作品を発表しました。作曲も演奏も出来た事がとても嬉しく良い経験となりました。またそれをきっかけに藝祭で後輩たちと自ら作曲した三味線音楽を発表する「三味フェス」という自主企画をやりました。3年連続で開催し、この秋には藝大アーツイン丸の内での発表の機会にも恵まれました。

私は長唄関係の家庭の生まれではありません。だからこそ長唄を知らない方々に伝えていきたいと思っています。江戸時代庶民の娯楽として流行った長唄を現代の人が聴いても魅力のあるものにしたい、それらを伝えられる演奏家になる、それが私の夢です。

藝大で学んだ事を力に、出会った仲間たちと長唄発展の道をこれからも模索し突き進んでいきたいと思います。