東京藝術大学入試情報サイト > 野川 菜つみ

藝大の入学前は桐朋学園大学の打楽器科でマリンバを専攻していました。打楽器には現代曲が多い事もあり、次第にサウンドアートや環境音など、いわゆる「音楽」だけではない音の世界に興味を持ち、自分でもひっそりと音の作品を作り始めました。また、サウンドデザインの仕事をしていた父への憧れから、漠然とですが実験的な音の表現のアプローチと、映像や空間のサウンドデザインを結びつけるようなことが出来たらなあと思っていました。そのような中、藝大で通称「音環」と呼ばれる音楽環境創造科や大学院の音楽音響創造領域を知り、音に対して領域横断的な視点のある自由な環境に魅力を感じたことが受験を決めたきっかけです。

音環には、作曲、音響学、音響心理学、音楽社会学など様々な専門分野から音や音楽に向き合う人達が集まっています。私が所属していた創作のゼミでは、電子音楽、ライブエレクトロニクス、VR、インスタレーションなど、複数メディアを用いた表現に関心を持つ人が多く、五線譜での作曲からDAWを用いた打ち込み、プログラミングなど、作品によって多様な方法で制作していました。院は他大学からの進学や海外からの留学生も多く、異なるバックグラウンドや価値観を持つ人達が集まっていて個性豊かです。他のゼミや学部生とも距離が近いので、音響を専門とする人から技術的な協力やアドバイスを得たり、逆に作曲を依頼してもらったり実験に参加したり、互いの専門を活かして一緒に活動する機会も多くあります。私は在学中に、映像研究科や海外の大学との映像作品の共同制作、学科の受託研究としての公共空間のサウンドデザイン、藝大で出会った人達と学外での創作活動等をしていました。自分の世界の狭さに落ち込むこともありましたが、私にとってどれも大切な出会いばかりで感謝の気持ちです。

自分がこれからやっていきたいことは、環境と音/音楽の関係への興味が根底にあります。環境とは都市や自然、社会だったり、人を取り巻く色々な要素が含まれています。どうしても視覚が優位の世の中ですが、まず「音を聴くこと」を通して世界と関わっていきたいなと思っています。

千住キャンパスのスタジオAにて、楽器の録音風景(撮影:縣健司)

台湾でのアニメーション共同制作プロジェクト