東京藝術大学入試情報サイト > 櫻井 なつき
四年前、自分がまだ高校生だったとき。藝大を希望した理由は、その入学試験のおもしろさでした。この試験を通過して集まってくる人たちが、どんなことを考えて、どういうものをつくっていくのだろう。自分もその中で制作ができたらいいな、とそんなような話だった気がします。
藝大に四年間通っていま思う魅力は、ここがいかに優れたアトリエかということです。
まず与えられるアトリエは広く、自分の制作のために使える場所はしっかりとあります。集中して自らの制作に取り組む傍に、同じように制作に取り組む同級生がいます。課題を中心に作業をしていくことになりますが、その答え方も様々で、また人によっては建築以外の制作をしていることもあるので、制作に取り組んでいること以外は全員やっていることがばらばらです。休憩をとれば、自然と互いの制作について話し合います。それがいつの間にか思想や建築についての議論へと変わり、白熱して、気がつくと数時間経っていることもあります。同級生だけではなく、どの学年の生徒とも、時として助手や講師ともそのような時間を過ごします。アトリエでの制作は常に誰かとともに行うことであり、刺激的です。
その上で受ける毎週のエスキスも、アトリエから持ち出された図面や話をもとに、十分すぎる時間をとって行われます。教授や講師の先生方に受ける鋭い批判やアドバイスは、またアトリエに持ち帰られて、次の制作や議論の種になります。
私はこの春から、同じく藝大の大学院に進学します。研究室はアトリエよりとても小さく、また決められた課題もないので、今までよりずっと自由に個人での制作に取り組めると思います。ですが、この制作への取り組み方は変わることはないでしょうし、院生になることでより刺激的な人たちがいる環境へ踏み出すことができると思っています。建築は一人でつくるものではありません。常に人とともにつくるものです。あの優れたアトリエのような場所を今度は自分からつくりだしていけるよう、この先も作品をつくり続けていきたいです。