東京藝術大学入試情報サイト > 野村 絵梨
素材と向き合って彫刻を学ぶこと
私は幼い頃から絵を描いたりものを作る事が好きでした。
小学生の頃、毎日一つ工作を作り学校へ持っていくという習慣を作り、半年程続けた事がありました。今思えばその作り続ける経験が後々彫刻を専攻するきっかけになったのだと思います。
美術の道に進む事が最も自然な選択肢だったので、せっかく目指すならという事で藝大を志望しました。
しかし自分の甘さから入試の壁にぶつかり、何度も何度も落ち続け、これで最後と決めた5度目でようやく合格しました。
入学すると1・2年までは基礎実習があり、粘土、木、石、金属の素材に触れて道具の使用法や素材の特性を学んでいきます。
実習期間は機械を使用せずできる作業は手作業で行い、徹底的に素材に向き合う事を教わります。
例えば石彫の場合鑿を使い手彫りで彫っていくのですが、まず硬さに驚きました。こんな硬いものどうやって形にしていくんだ、と初めは思いましたが石の抵抗感と鑿と石のぶつかる感覚が徐々に実感として体に馴染んでいくのです。
2年の後期からは素材を選択し、個人の制作が始まります。
私は2年で木彫、3・4年では石彫を中心に制作しました。基本的にはどちらも一つの塊から形を彫り起こしていくので作品を完成させるまでに時間がかかります。
卒業制作も大理石で制作しましたが、形が決まって磨く段階になるとほぼ形は変わりません。
毎日ヤスリをかけても本当に進んでいるのかわからず、気の遠くなる時間が過ぎていきました。
それでも救われる瞬間があります。少しずつ石が磨かれていくと、荒々しい無骨な表情が滑らかで艶やかな石の表情に変わってくるのがわかり、磨かれた大理石の表面が奇妙な色気を放ってくるのを感じるのです。
また大学に入って制作以外に刺激を受けた事は、自分と異なる価値観を持つ人と話ができる事です。
これは学年を重ねる毎に強く感じています。
様々なメディアを通じて各々の表現に向き合う他科の友人はもちろん、大学院に入学すると他大学を卒業した学生との出会いがあります。
同じ専攻であっても大学により重視する方向性が異なるので、彫刻や美術に対する新たな切り口からのアプローチやものの考え方に出会えます。話をする中で作品についての考えや価値観を深めていける為、とても刺激になっています。