東京藝術大学入試情報サイト > 飯森 詩織

私は6歳で日本舞踊を始めました。10歳のとき縁あって歌舞伎の舞踊公演に出させて頂き、「一期一会の舞台」の魅力に引き込まれました。幼い頃はただ先生の真似をして踊るだけでしたが、稽古を重ねていくうちに振りや歌詞の意味、作品の時代背景を理解できるようになるにつれ、次第に日本舞踊の奥深さに魅了されていきました。

日本舞踊の歴史を遡ると、能・狂言に辿り着きます。藝大はそのような日本伝統芸能をたくさん学ぶ事ができ、また洋楽・美術などの様々な芸術に溢れた環境であるということを知り、ぜひそのような場所に身を置き、沢山のことを学びたいと思い、受験を決意しました。

入学して何より嬉しかったのは、同じ道を志す同期ができたことです。彼らとは専門的な事を深く話し合う事ができ、日々の稽古では切磋琢磨しています。私は主専攻の日本舞踊のほか、長唄・三味線・小鼓・仕舞などに加え、ピアノ・声楽など洋楽の実技レッスンも受けています。その他ソルフェージュや一般教養科目を含め、一週間でこなすには大変な量を選択していますが、恵まれた環境の有り難さを日々感じながら通っています。

邦楽科は、年二回の公開実技試験をはじめ、9月の藝祭での邦楽科大演奏会・自主演奏会、11月に行われる定期演奏会など、舞台に立つ経験を多く積むことができます。本番だけでなく、朝早くから所作台を敷いたり、屏風を運んだりと、舞台の設置も学びます。舞台設営の大変さを知り、舞台裏の仕事をする事でその有り難みや責任感が深まります。また、伝統芸能の世界で重んじられる礼儀作法を先輩方から教えていただき、それを後輩に伝えていく大切な役目もあります。

四季の移り変わりを感じながら上野公園を歩く道のりも私には大切な時間です。時間がある時は、藝大美術館で絵画を観たり、図書館で衣裳や鬘の専門書を読んだり、美術学部の友人とお互いの作品や舞踊についての意見交換をするなど、藝大ならではの環境を楽しんでいます。

藝大で過ごせる4年間で感性を磨き、観てくださる方の心を動かせる舞踊家を目指して、毎日を大切に過ごしたいと思います。

▲公開実技試験の後、同期生と