東京藝術大学入試情報サイト > 井上 果歩
クルグズ音楽、ラテン語、中国琵琶、シタール…
4歳より音楽教室に通っており、小さい頃から音楽の仕組みについて思索することが好きでした。
そのためか、中学3年生で楽理科の存在を知ったときは、「将来自分はここで音楽学を学んでいるはずだ」という不思議な確信がありました。
しかし、実を言うと、大学受験期には楽理に対する興味が薄れていました。というのも、中高一貫校の普通科にいたため、同級生の多くが一般大学を志望しており、自身も音楽以外の選択肢を考えたからです。
結局、進路に関しては板挟み状態のまま、楽理にはなんとなく受かって入学した、というのが正直な話です。
ところが、入学後はすぐに楽理の生活に慣れ、音楽の温泉にどっぷり浸かる贅沢な日々が始まりました。
楽理科の授業はどれも魅力的ですが、私の人生の転機になったものが2つあります。
1つ目は2年次に受講した音楽民族学概説です。
私はこの授業でクルグズ(キルギス)の音楽に出会い、それについてもっと知りたいと思いました。これが私にとっての「音楽学」のスタートだったのかもしれません。
2つ目は3年次に履修した楽書講読ラテン語です。
中世の音楽理論書を講読する授業でしたが、理論を解読していく過程は、まさに私が小さい頃から好きだった「音楽の仕組みについて思索する」ことそのもので、これから先も音楽理論の勉強を続けたいと感じました。
4年次には、所属ゼミを音楽民族学にするか音楽理論にするかで悩みましたが、自身の能力等を考慮した結果、後者を選びました。
しかし、今でもクルグズ音楽演奏は続けていますし、中国琵琶、シタール、雅楽、日本舞踊など様々な副科実技も学びました。さらには、アジア音楽同好会を結成して日々活動に没頭しています。
現在、私は博士後期課程1年次に在籍しており、音楽の研究者の卵として修行を重ねています。
ただ、これから先、音楽の何の領域を研究するのかは全く決めていませんし、むしろ、今までやってきたこと、これから出会うことすべてを扱っていけたら、と野望を抱いています。
(2015.6)
プロフィール
1990年生まれ、神奈川県出身。東京藝術大学音楽学部楽理科を卒業。同大学院修士課程音楽文化学専攻音楽学を修了。学部卒業時、アカンサス音楽賞および同声会賞を受賞。修士在学中、楽理科の推薦により野村学芸財団の奨学生になる。修士課程修了時、大学院アカンサス音楽賞を受賞。現在、同大学院博士後期課程に在籍、日本学術振興会特別研究員(DC1)。音楽学を片山千佳子氏に、クルグズの楽器コムズをウメトバエワ・カリマン氏、クル=クヤクをバクティベク・チティルバエフ氏に師事。