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 「みる」側の立場や振る舞いへの問い直し

一般大学の学部在籍時より作家のアシスタントやアートプロジェクトのスタッフを務め、作品が立ち現れる場に寄り添ってきました。

その中で抱いたのが、メディアや作品の多様化が進む今日においては、作品が「作品」として今ここにあることにどのように応えていくか、「みる」側の立場や振る舞いへの問い直しが必要であるという問題意識です。

そこで、メディアの概念を広く捉え門戸を開放しているメディア映像専攻を志望しました。

1年生の前期に取り組む特別演習では、アイデアの出し方に始まり、身体表現、リサーチ、コミュニケーションデザイン、プログラミングなどさまざまな表現技法を学びます。

日々提示される課題にグループや個人で応えていくためには、すぐに実験する瞬発力やチームワークを要します。
異なる専門性を持つ学生同士で意見を戦わせながら制作していく過程は、視野の拡がる刺激的な経験です。
作品制作のバックグラウンドを持たなかった私も、ここで基本的なアイデアと技法の結び付け方を習得することができました。

また、学年を問わず節目で催される展示会は、設営や企画運営の実践であると同時に、一般来場者からのフィードバックを得、自身の作品を客観視する機会として良い緊張感となっています。

このような非常に密度の濃いカリキュラムが組まれていることに加え、学生数に対する教員数も多いため、自身の研究をより深化することができます。
私自身、一般の方を招き教授陣と共に作品を講評してもらう、展示会にて「見に来る意思のなかった鑑賞者」のいる状況をつくる、といった企てを投じており、新たな試みに挑戦しているところです。

ひとたび目にすれば、今までの自分には立ち戻れない。
「みる」という行為は、時にそうした切実さを内包するものであり、「つくる」ことに限りなく近い創造的な行為です。
ここを端緒に、新たな研究として一般化・共有することで、アートの内と外、発信者と受信者、といった二項対立の境界を解きほぐしていきたいと考えています。

(2016.06)