東京藝術大学入試情報サイト > 冨山 紗瑛
藝大生というと、絵画や彫刻を制作したり、楽器を演奏したり歌ったりする学生がほとんどですが、わたしの専攻はアートマネジメントです。たとえば学芸員や音楽ホールなどの文化施設に勤める人がわかりやすいですが、そういう、いわば「つくり手・表現する人」を支える人、になるための勉強をしています。
もともと音楽と美術の鑑賞が好きで、仕事もこれに携わるものに就きたいと考えていましたが、自分が絵を描いたり演奏したりする未来をあまり想像できませんでした。そんな時、アートマネジメントという言葉を知って、もしかしたらその世界でなら力になれるかもしれないと思い、音楽環境創造科を志望しました。また、どうしても「表現する人」とともに学びたいという気持ちを、藝大なら叶えられる気がしました。音環は、学科内で3つの専門領域:創作(作曲)/音響(録音、音響心理学)/アートプロデュース(身体表現、文化研究、アートマネジメント)に分かれるので、同期の20人にはさまざまなものの見方を教わったりできる刺激的な環境です。「つくり手」と「その受け取り手」のはざまにいたい、その曖昧な境界線を求めて千住キャンパスに人が集まるような感じがあります。とくに、授業の中心となるプロジェクト(ゼミ)ではとても充実した3年間を過ごしました。学生スタッフとしてアートプロジェクトの現場に入り、現在第一線で活躍するアーティストと活動したことは、貴重な経験になったと思います。卒業論文では、担当した「千住タウンレーベル」を事例に、LPレコードという媒体や記録する行為などについて触れる予定です。また、他学科や美術学部の授業も受講できるのは大きな魅力だと思います。
最近は各地で芸術祭などが開かれ、アートに大きな関心が寄せられるようになり、世間との距離も縮まってきました。今後アートマネージャーには、芸術の専門家からまちのおっちゃんに至るまで、どのような人にでも「表現する人」が何をやろうとしているのか・何のためにやるのか、などをそれぞれの言葉を使い、丁寧に価値付けをしながら説明する能力がさらに求められます。わたしもいつか「つくり手」の友人を支えられるよう、模索の日々が続きます。
<写真:冨田了平>