東京藝術大学入試情報サイト > 森 聖華

私が工芸科を目指したのは高校の修学旅行で行ったフランスのノートルダム大聖堂のバラ窓をみてその精密な作り込みと色がおりなす鮮やかさ、そして心が浄化されるような神秘的な空間に圧倒されたからです。そこから工芸というモノを作る分野に興味が湧き、芸大の工芸科を受験しようと思いました。

入学当初私は全くの無知で、工芸科に専攻が6つ(漆芸、染織、陶芸、鍛金、鋳金、彫金に現在はガラス、木工も加わっている)あるのを知りませんでした。何故金工が半分もしめてるんだろうなんて思ったりもしてました。

一年生の時にドサ回りといって六専攻のうち三つ選んで作品製作体験をし、それから専攻を決めます。

ドサ回りをしてみると面白いことに自分が行きたいと思っていた専攻が自分に合っていなかったり一番ないだろうと思っていた専攻がしっくりくるなんて現象が起こったりします。私はこのドサ回りをしてみて一番ないだろうと思っていた陶芸専攻に所属することになりました。

陶芸研究室は自分のやりたいことをやれるところだと感じています。それと、轆轤場という作業スペースが一人一つずつ与えられるのですが、その隣が先輩や後輩、留学生になるような配置になっていて年齢国籍問わず様々な方と交流できていろいろ学ぶことができます。

私は基本的に人見知りで無口なのですが、陶芸研究室は徹夜で窯を焚いたり制作したりするからかまるで家族のようで暖かい素敵なところだなと感じています。

工芸科は割と他の科に比べ素材に縛られていると言う方もいますが、どう素材に向き合うかどう生かすかこの素材で本当に作る意味があるのか深く考えることによって色んなことを学び吸収し、素材という縛りがあるからこそできる表現や強み、新しい試みが工芸にはあると私は思っています。狭いと思われている視野ももしかしたらどの科にも負けないくらい広いものを持っているかもしれません。今の私ではまだまだなのですが、そのような意志を持って作品制作をしていきたいと思っています。

老後は、そんな高望みはしないので、世界の端っこの方で轆轤回しながらのんびりと生きていけたらな~って思っています。