東京藝術大学入試情報サイト > 大迫 秀仁
私は大学在学時から自主制作として映画の制作を行っていました。
転機になったのは大学3年の夏にインターンとして参加した澤田サンダー監督の「ひかりのたび」という作品の撮影現場でした。自己流の撮影しか経験していなかった私が技術部インターンとして参加し、右も左も分からない状況でプロの技術部が脚本や芝居を重視し、ワンカットワンカット丁寧に撮影していく過程を目の当たりにした初めての経験でした。大学卒業まで自主制作を続け、撮影漬けの日々の中でふと自分の進路を考え始めた時、改めて技術的な学習、研究をしたいと考えるようになっていました。しかし実践の中でインプット、アウトプットを繰り返すことが重要であると考えていたため、学校に入るかどうか決めかねていましたが、監督や撮影照明など領域別に分かれ、より専門的な研究ができる点と「ひかりのたび」撮影時、澤田監督をはじめ映像研究科出身の方がいたこともあり大学院受験を決めました。
実際入学してみると目まぐるしく実習が続き、あっという間に一年が過ぎました。今まで自己流で行なっていた撮影技術がいかに精度の低いものだったかを痛感しながら次の課題として取り上げ、すぐ実践できる環境は大変有意義な時間であると実感しています。
また、国際色豊かな学生が集まっているということや頻繁に国際WSが行われているというのも今までにない刺激になっています。価値観や映画体験の大きく異なる人々同士で作品作りを行うのは今までになかった経験でしたし、撮影時のコミュニケーションのあり方など技術だけではない製作アプローチを考えるきっかけになりました。撮影に関して技術的な精度を高めるのは誰しもが取り組むことですが、映画を一本仕上げるために相手の考えを汲むことのできるコミュニケーション能力が必要だと改めて感じさせられる経験ができたのは、研究科に来てとても大きな収穫なのだと思います。
将来の展望として、まだ経験の浅いフィルムでの収録やデジタルでの新たなアプローチなど表現の幅を広げるとともに、作品作りの基盤を国外へと広げられるよう海外留学も視野に入れて活動していきたいと考えています。