★多様なスキルを持つ人たちの中で、自分にできること・強みを考える
自分の中の唯一のスキルを信じて
一番最初に絵を描くことを志し、進路を決めたのは高校受験の頃でした。私は小中学校時代、難病を患っていたため、幼少期はほとんど学校へ行けず、家で絵を描いたり、ゲームをしたりして過ごしていました。
高校受験の前には体調が回復しはじめ、その時に唯一自分の中で確かなスキルであった「絵」をもっと伸ばしたいと思い、美術科のある高校への進学を決めました。高校に進んだ後も、「せっかく大学に進学するなら、トップクラスの学校に行きたい」という思いがありました。
また、高校1年生のときに、教育実習生として東京藝術大学油画科に在籍する先生が来たことにも影響を受け、藝大の油画科を目指すことにしました。
藝大での学生生活について
基本的には、大学でゼミや共通カリキュラムなどの授業に取り組み、それらから得たフィードバックを活かしながら自分の制作研究を進めていくような生活です。
今の芸大油画では1.2年次は共通カリキュラムをメインにゼミや自由制作を行います。3.4年次は主に自由制作及び、進級・卒業制作に向けての制作となっています。
その中でも、特に記憶に残っている授業としては、2年生の前期に行った課題です。まず初日にキャンバスロールと4メートルの木材を何本か渡され、最低2.5m×2.5m の絵画を実質10日以内に描けという課題です。身体サイズ以上の絵画を、タイトなスケジュールで制作する経験は、それまでの自分の思考を超えるものであり、直接身体的な経験値となりました。
卒業制作ではこの課題の時よりも大きな絵を描いたのですが、その制作においてもそのとき得た力を活かすことができたように感じています。
世界に適応し続けて、進化し続ける作家に卒業後は作家として生きていくことを目指しています。自分の作品はテクノロジーやメディアの発展に対応して柔軟に変化していくことが大切なので、卒業してもさまざまな体験や技術に触れ続け、実験を繰り返すことで、作家として絶えず進化していきたいと思っています。
受験を乗り越えた先で待つ、新しい困難藝大は環境と体験と空間を与えてくれます。ただ、そこで何をするか、どう過ごすかは個人に大きく任されています。それはいい意味でも悪い意味でも自由な場所ということであり、何をするべきかを探求し、様々な挑戦をおこなっていくためには良い場所なのではないかと思います。
入るのも難しい入試ですが、それを乗り越えた先の困難はまた別の形で現れてきます。受験頑張ってください!
3年後期進級制作展「intro_1」での展示風景