東京藝術大学入試情報サイト > 大西 里佳
歴史的建造物の保存修復には技術や理念は勿論、遺跡整備、防災対策、まちづくり、保護制度、国際協力など、多岐にわたる視点からの総合的な判断が求められます。保存修復建造物研究室では総合的な知識を身につけることに加え、実践的な学習を通じて歴史的建造物の保存・活用のために必要な技術を身につけることができます。実践的に学べることが本研究室の最大の魅力だと思います。演習の授業には、修復技術を習得するための実測・製図などに加え、受託研究や見学会が多いです。現場で働いている方や行政の方、また所有者の方などが協力してくださり、講義で学んだことを実際にアウトプットできる機会にとても恵まれた環境です。
私は大学院から芸大に入学し、学部は他大学の理工学部建築学科に所属していました。卒業論文の調査を進めるうちに、建築の「保存」に興味を持ち始めました。建築といっても、そこには美術・歴史・社会など様々な要素が内在し、複雑に関係し合っているので、保存を学ぶのであれば“理工学部建築学科”という枠から出てみたいと考えました。そこで東京藝術大学に文化財保存学専攻というものを知り、保存修復について建築以外の分野からのアプローチも学べると思い進路を決めました。
文化財保存学専攻は保存修復 日本画・油画・彫刻・工芸・建造物・保存科学・システムの7分野から構成されています。分野ごとに保存修復の考え方は様々ですが、どのような理念で実際に修復してきたのか、という流れを学ぶことで、建築の保存修復に対する視点も多様にすることができたと思います。カリキュラムとしては、文化財保存学専攻が修士からの専攻なので、修士1年は「文化財とは?」といった授業から始まり、7つの分野について基本的な知識を身につけることができました。1年間かけて各分野の演習の授業もあり、講義の内容を体験として学べることも魅力的でした。また同級生でも専門が異なるので何処かに見学に行った際も視点が異なり、とても興味深かったです。これは文化財保存学専攻ならではのおもしろさだと思います。