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孤独な第一走者
私は元々、日本映画の研究で大学院に行きたかったのですが、経済的理由から学部卒業後は海運会社に就職をして、航海士(中東航路を担当)のような仕事を3年程やっていました。
そんな時、大学時代の良き後輩が藝大の監督コースに入って、商業デビューをしたのです!
彼のDVDをTSUTAYAで発見した時「僕も映画監督になりたい!」と図々しくも思ったのが、藝大を意識し始めたきっかけでした。
ゼミでは筒井ともみ教授による強烈なダメ出しを毎回受けますが、その言葉は厳しくも強い愛情に溢れていて、映画における孤独な第一走者である脚本家が、いかに物語を設計すべきかを考えさせてくれます。
その他の講義としては、映画を批評的に論じるものが多いのですが、柳島克己教授(撮影監督)音声解説のもと『アウトレイジ・ビヨンド』(北野武監督作品)を観るという授業が、私にとって特別な映画体験になりました。
映画の持つ強度とは、作家が独自のテーマを語る理由を内部に孕んだ作品が持つ、身体から血の一滴を絞り出す様な深々とした切実さであり、未熟な私たちはウェルメイドなものよりも、いかに作品に熱量を封じ込めるかを考えなくてはなりません。
また、映画専攻での制作本数は限られているため、一本一本の作品を大切にしていくと同時に、クローズにならず積極的に外部に活動の場を求めていく姿勢も必要です。
私は入学以前に初監督した『ふざけるんじゃねえよ』(2014)という小さな作品で、東京国際映画祭やNippon Connectionなど国内外の映画祭に招待をしていただく幸運に恵まれ、その後もアーツカウンシル東京助成によるオムニバス映画への監督としての招聘や、東京フィルメックス学生審査員、マーティン・スコセッシ監督作品「SILENCE」への参加など、藝大の外でも活動をする機会を得ることができました。
私のささやかな活動が映画専攻のPRになるとは到底思えませんが、映画は人と人とを強く結びつける表現なので、卒業制作などを一人でも多くの方に見ていただくため、ひいては自分の表現の場を広げていくためにも、今後もオープンな活動を継続させていきたいと考えています。
(2015.6)