東京藝術大学入試情報サイト > 菅沼 起一
学術的な音楽の研究
私が音楽文化学を志望した理由は、「普段取り組んでいる音楽をもっと深く、学術的に学びたい」からに他なりません。
学部時代、古楽科でリコーダーを専攻していた私ですが、楽器、楽譜、奏法など音楽の当時の姿に迫りそれを演奏に活かす古楽というレパートリーには、音楽に対する学術的なアプローチが不可欠です。
そのアプローチを一から学ぶために、私は大学院から音楽学へと生活の場を移しました。
音楽文化学では、講義やゼミ、語学、さらには種々の演奏実技も含め音楽にまつわる様々な授業を受けることができます。
特に大学院では、生徒が1コマ分の授業を丸ごと使い発表するゼミが大いに盛り上がり、その準備は非常に熱の入ったハードなものになります。
そうした授業の準備が同時期に幾重にも重なると、自分の空き時間・睡眠時間などどこへやら、となるのが常ではありますが、そうした環境に身を置くことで得られるものは素晴らしいものであり、そのような勉学が行えるこの音楽文化学は私にとって最高の環境です。
また、音楽文化学は人数も多く、多くの学生が刻苦勉励している姿は非常に刺激になり、その中で自分をさらに高める大きなモチベーションにつながっています。
現在、私が関心を持って取り組んでいることは「演奏という行為を含めた音楽の研究」です。
音楽の研究、というと楽譜と向き合い、楽譜に書かれたことを分析し読み解くようなイメージが強いかと思います。
しかし、そこに「では、実際はどのように演奏されていたのか、どのように音として鳴り響いていたのか」という観点を加えることで、また異なった見え方がすることが多々あります。
これは、演奏専攻に在籍していた学部時代の経験に由来するものであることは言うまでもありません。
例え演奏の専攻から研究の専攻へと移ったとしても、そこには「一貫性」があります。同じ「音楽」というものを対象としている以上、そこに強い一貫性、関連性があることは不思議ではありません。
演奏を通して得た経験を研究に活かし、また、研究活動で得た知見を演奏に活かす。
学部時代に「もっと勉強したい!」と思っていた私は、今、本当に素晴らしい勉学を音楽文化学で行えていると感じています。
(2016.6)
プロフィール
1991年生まれ。京都府京都市出身。東京藝術大学古楽科リコーダー専攻を卒業。これまでにリコーダーを山岡重治、太田光子、中村洋彦の各氏に師事。その後、同大学院音楽研究科音楽学専攻に進学し、修士課程を修了。修了時に大学院アカンサス音楽賞を受賞し、2016年3月末に行われた学内での論文発表会に選抜される。研究活動の傍ら、中世音楽から新作初演に至るリコーダーの幅広いレパートリーを用い、学術研究を活かした活発な演奏活動を展開中。2010年度より守谷育英会奨学生。2014年度より大学推薦を受け野村学芸財団奨学生。現在、日本学術振興会・特別研究員【DC1】。日本音楽学会、西洋中世学会、日本イタリア古楽協会各会員。