東京藝術大学入試情報サイト > 前田 皓生

あなたが藝大を志望した理由は何ですか、としばしば聞かれるのですが、改めて考えると中々難しくぴったりな言葉が思いつきません。幼少期からの所謂英才教育は受けていなかったのですが、これまで指導してくださった先生方が大前提に音楽は楽しいものということを教えてくださったため、少しずつ音楽の道へ傾倒していきました。なぜ藝大を志望したのか、という問いに対しては藝大を志望した頃の中学生の自分はおそらく音楽以外の世界が見えていなかったからと答えるしかないかもしれません。

私が所属する楽理科ですが、入って最初の難関は授業が難しいことでも、一限の授業に行かなければならないことでもなく、楽理科って何をやっているの、という問いに上手く返せるかどうかです。結論から言えば、みんな音楽に関わる好きなことをやっている、ではないでしょうか。西洋から東洋(これらの言葉はしばしば議論の対象になりますが)まで幅広い世界の音楽を、古代から現代まで幅広い時代の中で時に実践的に研究しています。音楽に関わることを知りたいと思うのであれば、楽理科はオススメです。

楽理科の授業はゼミや講義、実技など様々ありますが、中心になるのは自分の研究ではないでしょうか。自身のテーマに合わせ自らリサーチを行い、指導教員の先生から論文作成に向けたアドバイスをいただきます。私は20世紀における演奏様式に関する研究を録音資料をもとに行っているため、現在指導教員の先生だけでなく藝大附属図書館をはじめ、蓄音機とレコード、録音技術に関する専門家に協力していただいています。

藝大生は行方不明になる、就職率が低いなどと揶揄されていますが、藝大生の望む職業がたまたま企業に就職という形をとらないものが多いだけで、実際には多くの藝大生が自身のスキルを活かした職に就いているかと思います。私はこのまま研究を続けていきたいと考えており、世界的にも未だに進んでいない録音媒体を対象とした研究の体系化を試みたいと考えています。生涯現役を目標に最期の瞬間まで音楽と向き合っていたいです。