東京藝術大学入試情報サイト > 星野 友紀

唯一の場所

私は附属高校と学部のあわせて7年間をピアノ科で過ごしました。チェンバロの音色とバッハ以前の音楽に魅せられたのが学部2年のとき、もっとチェンバロを勉強したい、という一心で古楽科の受験を決意したのは学部3年の秋でした。

古楽科の大きな特徴として、アンサンブルの機会が多い、ということが挙げられます。古楽アンサンブルの授業は3つあり、①鍵盤楽器 ②声楽 ③弦楽器 とテーマが決められていますが、好きなものをいくつでも履修することができ、もちろん古楽器を使います。

昨年、①ではモンテヴェルディのオペラをハイライト上演し、②ではヴィオラ・ダ・ガンバを用いてダウランドなどイギリスの古楽を学びました。

一番思い出深いのは③の集中講義として行ったオーケストラ・プロジェクトというイベントです。たった2日間でピゼンデル、C.P.E.バッハ、ハイドンのシンフォニーをリハーサルし演奏会を行うというもので、限られた時間のなかで大曲を仕上げる難しさを学びました。同時に、プロはこのように短いリハーサルで曲を仕上げ日々のコンサートをこなしていることを認識し、改めて身が引き締まる思いでした。この授業のインスペクターをしていたことでオーケストラを運営するスキルを学んだことも大きな収穫のひとつです。

授業以外でもバロック声楽の実技試験で助演したり、バロックヴァイオリンの試演会に出たり、とにかく毎日がアンサンブルでした。

こんなにも古楽器によるアンサンブルを学ぶ機会があるのは、選択できる専攻が充実しているおかげです。古楽科にはチェンバロ、フォルテピアノ、バロックオルガン、バロックヴァイオリン、バロックチェロ、リコーダー、バロック声楽の7つの専攻があり、副科ではさらにフラウト・トラヴェルソ、バロックオーボエ、ヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶことができるため、前述のシンフォニーのような大きな編成のものでも古楽器だけで演奏することが可能なのです。古楽を勉強する上でこれほど恵まれた環境は、日本では藝大くらいかもしれません。

この場所で学べていることに感謝し、もっとたくさんのことを吸収していきたいです。