東京藝術大学入試情報サイト > 荻野 紗

1.日本では建築科は工学に属することが多い。「藝大に建築なんてあったんだ」とお思いの方も多いだろう。かくいう私も、漠然と美大を目指し画塾に通う中で「建築科みたいだね」と言われたことで初めてその存在を知ったのだ。それまでは建築はお堅くて難しい、自分とは到底縁のないものだと思っていた。しかしひとたび予備校で建築のデッサンを始めると、まだこの世にないものを描く面白さに私はたちまち夢中になった。

 

2.1浪を経て芸大に入学してからもその面白さは変わらず、むしろ一学年15人に対して8人の教授陣がいる贅沢な場で毎週議論を交わすことで自分の頭の中にあるモヤモヤとした空間がより一層クリアに描けるようになっていった。ここでの議論は必ずしも言葉で交わすものではなく、絵や、図面や、模型といった様々な表現で交わすことができるものであった。芸大で建築を学ぶ面白さは、この表現の部分にあると思う。そんなハードな4年間の集大成として卒業制作では「映画と建築」をテーマに、他芸術を建築の目から読み解いてみることで、どんな人の頭の中にもある建築的思考について表現を試みた。

 

3.現在は藝大の学部を卒業し、大学院生として青木淳研究室に所属している。大学院でも相変わらず、教授や同級生と様々な手法で議論を繰り返す充実した日々を送っている。工学の色が強い日本で、あえて美術に属して建築を考えることの意義について、引き続き考え続けていくつもりだ。

(2021.05)

 

 

 

 

(上)

学部3年次 地区設計「カテゴライズグラデーション」

敷地のノーテーションを分類化、言語化しえない状態をコラージュにて表現。

(下)

学部3年次 2日間課題「器のようなケーキ」

落ち葉を紅葉の順に並べ、一度茹でて正方形に切って整えて模型に取り付けてみる。その後乾燥と共に葉が元の形を取り戻すことで有機的な空間が立ち現れる。

[プロフィール]

荻野紗 Suzu Ogino

2015 私立玉川学園卒業

2020 東京藝術大学美術学部建築科卒業

現在 同大学大学院美術研究科建築専攻 青木淳研究室在籍

平山郁夫賞奨学金受賞(2018年度)